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拠点リーダー挨拶
「千葉大学 植物工場実証・展示・研修拠点事業」の経緯とねらい
拠点リーダー 千葉大学 教授 丸尾 達
本拠点は、平成21年度農林水産省モデルハウス型植物工場実証・展示・研修事業で設置されましたが、事業の趣旨に ご賛同いただきました多くの民間企業・団体、教育・研究機関からなるコンソーシアムメンバーのご支援・ご協力のもとに 成立したものです。現に、施設の内部設備の多くはコンソーシアムの負担で設置されたものです。東日本大震災等の影響もあり、実際に稼働し始めたのは平成23年4月で、6月14日に開所式を開催しました。現在日本の農業は、大変大きな岐路に立っており、急激な農家人口の減少と高齢化が進み、今後5〜10年以内にはさらに厳しい状況になることが予想されています。そのような状況下で、野菜等の食料を安定的に周年生産する、植物工場を 国内に普及・拡大させることが本事業の目的です。千葉大学では、単に植物工場を普及・拡大させるだけでなく、人や環境に優しい植物工場を めざします。つまり最少の資源とエネルギーの投入で、最大の収量を得るシステムを確立し、環境負荷を最少限に抑える技術開発を進めます。具体的には、重油燃焼型の暖房機に変えてヒートポンプの積極的活用雨水利用も行います。また、単純な環境制御ではなく、上記目的を達成するために最適な制御を行う統合環境制御技術の確立に努めるとともに、栽培や環境のデータの収集・蓄積を積極的に進め、サイエンス農業をサポートする植物工場データベースを構築し、植物工場分野の世界的開発拠点になることを目指しています。
千葉大学名誉教授 古在 豊樹
本事業では、省資源・環境保全、安全・安心・健康に配慮し、しかも生産性が安定的に高く、さらには、福祉社会に広く受け入れられるような、サステナプル(持続可能)な植物工場の実現と普及を目指している。その実現のための、デザインと利用法を関係者の協働と叡智で創造したいと願っている。植物工場は、植物生産方式の多様性を増し、また農業を基盤とした環境健康産業全体を振興し、安全で楽しい軽作業を提供し、さらには高齢者や障がい者を含めて多様な人々に就業機会を提供することができるとの観点から、技術的、工学的、経営的な側面からだけではなく、多面的な観点からの検討を試みたい。
植物工場が、21世紀の食料問題、環境問題、エネルギー・資源問題の同時並行的解決、さらには人間の新しいライフスタイルとパートナーシップの創造に貢献できるように、最大限の努力をしたい。
是非とも、多くの皆様のご指導、ご支援、ご協力をお願いしたいと願っている。
千葉大学名誉教授 篠原 温
千葉大学植物工場拠点が稼働し始めて2年が経ちました。それ以前の施設園芸や植物工場と何が変わったでしょうか?私は環境制御についての「常識」が大きく変わったと思っています。それまでは、「光」、「温度」の制御が主として考慮されてきましたが、これらに加えて、「CO2」、「気流速」、「飽差」の制御も必須と考えられるようになりました。
本拠点においても、これらの5つの要素の計測データの見える化は著しい進展を見せており、上記の必須項目を適切に制御し、より多収で高品質な生産物を作るための統合環境制御ソフトづくりが大きく前進してきています。
近い将来、日本型(ひいては東アジア型)の素晴らしい統合ソフトの完成によって、日本の植物工場の姿は一変し、経験のない人でも参入でき、安定的で継続可能な営農形態となることが期待されます。本拠点ではその成果の一端をつぶさに見ることができます。