Copyright © The Nature Therapy Project, Chiba University. All rights reserved.

研究紹介

  1. 「自然セラピー」の概念
    1. Back-to-Nature theory(自然回帰理論)
    2. 自然がもたらす「予防医学的効果」
  2. 快適性評価システム
  3. 新たな研究キーワード
    1. 都市森林浴
    2. 持続的自然セラピー

「自然セラピー」の概念

Back-to-Nature theory(自然回帰理論)

人は、人となって700万年が経過しますが、その進化の過程99.99%以上を自然環境下で生活してきました。私たちは、自然環境に適した体で現代社会を生きているため、日常的に強いストレス状態にあることが知られています。自然環境や自然由来の刺激と接すると、人はリラックスすることが経験的に知られてきましたが、それは人が自然対応用にできているからなのです。

(O'Grady and Meinecke, Journal of Societal and Cultural Research 1(1):1-25, 2015)

図1. 人と自然の関係

自然がもたらす「予防医学的効果」

自然環境あるいは自然由来の刺激によって生理的にリラックスし、低下している免疫機能が改善するという「予防医学的効果」が、自然セラピーの基本概念です。自然セラピー研究を進めることによって、将来的には、日本を含めた世界各国において問題となっている医療費削減、ならびに人々のQOL(生活の質)の向上に貢献します。

(Shinrin-yoku,Hachette UK company, 2018(英語版)創元社, 2018(日本語版)など)

図2. 自然セラピーの概念図

快適性評価システム

私たちの体は自然対応用にできているため、自然環境あるいは自然由来の刺激に対して、勝手にシンクロナイズし、快適な状態がもたらされます。この現象は経験的には知られていますが、科学的なデータの蓄積は不十分です。最近まで、自然がもたらすリラックス効果に関する評価は、質問紙法を中心に行われてきたのです。一方、ここ十数年程度で、急速に生理的評価技術が進歩しました。私たちの研究チームでは、これらの計測機器を組み合わせた快適性評価システムを構築し、自然セラピーが人の生理応答に及ぼす影響に関するデータ蓄積を進めています。

  • 脳活動:近赤外分光法による左右前頭前野酸素化ヘモグロビン濃度
  • 自律神経活動:心拍変動性による副交感・交感神経活動
  • 内分泌活動:唾液中ストレスマーカー(コルチゾール等)
  • 免疫活動:ナチュラルキラー細胞活性
図3. 森林等の実際の自然環境を対象とした「フィールド実験」の様子
図4. 嗅覚等の五感別の刺激を対象とした「実験室実験」の様子

新たな研究キーワード

「都市森林浴TM

森林浴は、1982年に秋山元林野庁長官によって提案された言葉ですが、2018年以降「Shinrin-yoku」が日本発の英語となって世界中に浸透し、多くの書籍が出版されています(Shinrin-yoku, Hachette UK company, 2018(英語版)創元社, 2018(日本語版)など)。

このような状況下、代表的な人工環境である「都市部」における「人と自然の関係の解明」を目指した新たな概念として「都市森林浴」を提案しています。現在、自然のリラックス効果を目指した開発を進めている企業から委託を受け、「都市森林浴」をテーマとした共同研究を東京で進めています。

ここで示す「Shinrin-yoku」は、以下を包含したすべての自然を対象とします。

  1. 大きな自然:森林、木材建築物等
  2. 中程度の自然:公園、庭、バルコニー等
  3. 小さな自然:木製品、盆栽、花き、ディスプレイ、音、精油等

2050年には世界の人口の2/3が都市部に居住し、ストレス状態が高まると予測されています。人の体が自然対応用にできているという利点を生かし、都市部における自然由来の刺激がもたらす生理的リラックス効果を解明するとともに、その利用法を提案します。

「持続的自然セラピーTM

宮崎は、(独)森林総合研究所における1990年代から「森林浴」研究をスタートさせました。同時に「木材セラピー」研究を進め、千葉大学環境健康フィールド科学センターに異動後は、「公園セラピー」「花きセラピー」を統合した「自然セラピー」という概念で研究を進めています。

「自然セラピー」研究を遂行している段階で、長期的な概念として「環境的」「文化的」「社会的」「経済的」持続性を組み込んだ「持続的自然セラピー」という概念が重要であると考えるに至り、池井らとともに英文誌にSustainable Nature Therapy特集号を提案しました。これは大きな概念であり、一研究室では達成できません。「環境的」「文化的」「社会的」あるいは「経済的」視点を持った関連研究者が、他分野から集まることにより、「持続的自然セラピー」が形作られると考えています。  

「持続的自然セラピー」という大きな概念を念頭に置きながら、今、自分ができる研究を進め、少しずつ、共同研究の和を広げていきます。

もっと詳しく知りたい方へ

連載記事・パンフレット

私たちは、得られた成果を基に、新聞・雑誌等での連載記事や企業・団体等のパンフレットを作成し、一般の皆さまに向けた情報発信を行っています。

講演動画(youtube)

宮崎・池井の講演動画(約48分間, 日本語版)です。2022年3月25日に木材会館にて講演会「木材セラピーを科学する」を行いました。

上記講演後に実施した質疑応答(約26分間, 日本語版)です。

宮崎の講演動画(約18分間, 日本語版)です。2020年11月27日に開催されたドイツ・Kaiserslautern(カイザースラウテルン)工科大学(TUK)創立50周年記念オンライン大会にて、基調講演「Shinrin-yoku and home office(森林浴とホームオフィス)」を行いました。

宮崎の講演動画(約1時間, 日本語・逐次英語通訳版)です。2019年10月23日にニューヨークのジャパン・ソサエティにて、講演「Forest Bathing: Seeking Wellness through Nature」を行いました。

Japanese | English

成果の発信

リンク